笛と太鼓の懐かしいお囃子が聞こえてくる。
この音を聞くと、この頃の空気を感じると、何故か涙が零(こぼ)れる。
本当は豊作を祝う村の祭りの山車を引く目出度いお囃子なのだが。
病の床でこの音を聞き乍ら逝った友の事を思い出す。
豊作に感謝し、健康に感謝して、村に生まれて育った厄年の同級生がこの日ばかりは遠くから帰って来て一処にお神酒(みき)を酌み交わしこの日のために皆んなで綯(な)った二本の太縄に掴まって喧嘩し乍ら山車(だし)を引き上げる。
こんなたわいも無い事だが、ずっと昔からこの村の大切なたいせつな行事なのだ。
今年も又この祭りが無事やれる。
有難い事だ。
かしもむら なかしまのりお