この冬は寒かった。
節分の前後十日間は、-13℃まで下がった。
朝7時にプレカット工場に行く時、南の恵那山連邦の向こうから昇ってくる太陽が山の端をオレンジ色に染めて、せれはそれは、えも言われぬ美しさだ。
車を降りて写真を撮るのだが、寒さで手も顔も痛い。
工場での打合せを済ませて帰る頃に、太陽は小和知と小郷の里を照らして、我が故郷は白く輝いている。
まだ里は静かに眠っているのだが、山は眩しいばかりに白く輝いて、早く起きろと急かせる。
真っ青な空と真っ白な山と里が何とも愛らしくて、じっと見つめていると涙が出てくる。
寒くて、雪もたくさん降って、仕事もやりにくく、生活も大変だ。
でもこの寒さに耐えて、もうすぐ来る春の気配を感じる時、そのありがたさ、嬉しさは何倍にもなる。
山の木々も、畑の草も、庭の花も、鳥やけものたちも、この厳しい山の地に生きるものにしか判らない喜びだと思う。
かしもむら なかしまのりお